エンカレ授業の紹介「コンサルタントに学ぶ、"ファッション"の話」
先日のエンカレ授業のテーマは"ファッション"でした。日常において、みんなが着ている服に着目した授業をすることで、"ファッション"と社会のつながりについて、学習してもらいました。
特別講師にエンカレ「細川ゼミ」顧問の細川甚孝先生をお招きしました。
エンカレ特別コンサル 細川 甚孝(しげのり)先生
合同会社政策支援 代表社員
上智大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程満期退学
早稲田大学大隈記念大学院公共経営研究科修了
細川先生の詳しいプロフィールはこちら
もくじ
"ファッション"と社会のつながりを学ぶ!
実施日:2017年8月11日
授業の目的
ファッションは自己表現の手段でありながら、同時に、わたしたち消費者が服の生産者とつながる経済活動でもあります。そこで、今回の授業は、子どもたちにとっても身近にある"ファッション"をテーマにして、その裏側にある社会の特徴や問題を知ってもらうことを目的に実施しました。
自分が好きで選んでいる服も、じつは流行の影響を大きく受けていることが多く、そんな服や流行を作っている人たちにも、生活があり、企業があり、そして、社会とつながっています。いったい、ファッション業界の裏側では、どんな人たちが服を作っていて、どんな問題を抱えているのか、子どもたちにしっかりと学んでもらいました。
細川先生から学んだこと
細川先生の講義では、主に、「ファッションの流行」と「ファスト・ファッション問題」をテーマにして、話をして頂きました。
▼ファッションの流行について
まずはスライドショーで、1970年代~2000年代に流行ったファッションを10年ごとに振り返っていきました。その後、1970年代⇔1990年代、1980年代⇔2000年代といったように20年前とのファッションの比較をしていって、流行は繰り返す性質のもの、と説明していきました。他にも、ファッションの歴史を10年毎に100年分振り返る動画を見てもらうことで、「可愛い」や「かっこいい」という感性は、常に時代と共に変化していることを理解してもらいました。
▼ファスト・ファッション問題について
ファスト・ファッションは、早くて安いファストフードを名前の由来としており、安くて大量生産されている服全般のことを指す言葉です。今の時代、ファスト・ファッションは生活に欠かせない存在ですが、しかし、服を大量生産するという性質上、その背景では様々な問題があることを説明していきました。
環境面の問題 ⇒ 染料など薬剤廃棄による水質汚染や、不要になった服の廃棄量が増加した。(たとえば、オーストラリアでは10分間で6000㎏以上の服が廃棄されていたり、日本やヨーロッパの会社が自国よりも環境規制の緩い国に工場を作って、そこで排水して環境を汚すことが問題になっている。)
労働面の問題 ⇒ 低賃金で過酷な労働が強いられやすい状態。とくに問題なのが発展途上国の労働者で、大体の場合、彼らは法律で保証される「最低賃金」のみしか与えられず、将来の生活を設計できるような「生活賃金」が支払われない。(例:バングラディッシュの賃金は平均一か月7000円:一日あたり300円。)
▼ファスト・ファッション問題の解決法
社会や企業は、ファスト・ファッション問題に対し、いくつかの取り組みを行っていますが、まだまだ全体に浸透していないのが現状です。
<企業・社会の取り組み例>
・ユニクロの全商品リサイクル活動
・H&M:古着の回収(2013~)
・エシカルファッションの浸透化
・フェアトレードの推進
エシカルファッション ⇒ オーガニック・コットンなど環境負荷の低い素材を使用したり、児童労働の撤廃や人権に配慮した生産・流通過程によって作られた服を意味する言葉。
フェアトレード ⇒ 商品に見合う公正な価格で取引する貿易を指す言葉で、販路を持たない立場の弱い生産者に対し、先進国側が非常に安い賃金しか払わないような状況を避けるためのもの。
一方、消費者側(着る側)ができる努力としては、不要なものをあれこれ買わず、捨てる際もリサイクルなどを考慮し、できることなら、長く着用できるちゃんとした価格(品質)の服を選別して購入することなどが挙げられます。
※備考
ファスト・ファッション問題について、興味・関心のある方は、ぜひ映画「ザ・トゥルー・コスト」をご視聴ください。とても分かりやすく、ファスト・ファッションについて知ることができます。
グループワークで実施したこと
今回のグループワークでは、カンタンなディスカッションや、物事の循環を考える「ぐるぐる分析」などをしました。
▼ディスカッション
前もって生徒たちに普段のファッションが分かるように画像を送ってもらっておいて、自分たちのファッションのこだわりについて、それぞれ発表してもらいました。その後、ファッションにおいて、「皆にとって何がかっこいいのか?」、「何を重視して服を選ぶか?」など、各自の意見を自由に話し合ってもらいました。
▼ぐるぐる分析
ぐるぐる分析は、「今の状況が良い方向に続いたら・・・」という循環と、「今の状況が悪い方向に続いたら・・・」という循環について、シミュレーションしてもらうワークのことです。今回はファスト・ファッションをテーマにして、深刻な社会問題であることを認識してもらうため、悪い方向の場合のみを考えてもらいました。
生徒たちの様子
授業冒頭では、ファッションに興味のある子といない子がいましたが、数十年も昔のファッションを見ると、「えー、ありえない」とドン引きしたり、「あー、こういう人、いるいる」など様々な反応をして、どの子もワイワイと楽しみながら取り組んでいました。花柄・ボタニカルファッションがオーガニックになったり、グランジファッションのネルシャツがギンガムチェックシャツになったり、プロデューサー巻きがミラノ巻きになったりと、実際に服の写真を見てもらいながらの授業は、彼らの意欲を惹き出したように感じます。
ファスト・ファッション問題の話になると、生徒たちも楽しい気持ちを切り替えて、少しずつ真剣モードになり、きちんとワークにも取り組んでくれて、ロジカルシンキングを用いながら社会問題を捉えていく力を養ってくれました。
また、授業の中で印象的だったシーンは、あるエシカルファッションブランドで作られたピアスの値段当てクイズをやってみたところ、生徒たちが「5,000円?」「10,000円くらい?」と言っていて、正解が50,000円だと発表すると驚いていたことでした。
「そのくらいで価格設定しないと、このピアスを作って販売している人たちの生活を担保することは難しい」と説明すると、まだ学生には慣れない価格帯に、「うーん・・・」と、頭では分かっていつつも、やはりちょっと高いと感じていたのかと思います。
細川先生から一言
今回のエンカレ授業を通して、服を着ることには、単なる「ファッション」以上の意味があることが分かりました。私たちは流行や値段ばかりをみて、服を選びがちです。
しかし、その服ができる過程や、なぜその値段なのか?などを考えてみると、その裏側には社会の大きな問題が隠されていると分かってきます。
また、服といった子どもたちにとって身近なものを通して、子どもたちが社会の問題について考えられるようにしていくことは、彼らが大人になったとき役立つのはもちろん、大学入試の対策にもなります。
今回の授業では、私も驚くような発表をしてくれた生徒もいました。この調子で服だけでなく、いろいろなこと疑問をもったり、思考していってくれればと思います。
授業を受けた生徒たちが、いつか自分で服を選ぶ時、どんな基準で服を選べばいいか、色々と想像力を働かせてくれるようになってくれれば、うれしいです。
今回のエンカレを主催/監修していただいた細川先生の「細川ゼミ」の他の授業の様子はこちら。