こんにちは! 学習支援塾ビーンズです。
今回は学習支援塾ビーンズが取り組んでいる授業コンテンツの一つ「生徒の「普通」への先入観を外すワーク」について紹介したいと思います。
ビーンズでは「子どもたちが抱いている人生の先入観」のことを指して「普通」と呼んでいます。
これは、ビーンズにくる子どもたちがよく口にする「ふつうがいい」「ふつうになりたい」という言葉からきています。
今回は、子どもたちが持つ人生の先入観、「普通」の例と、それが子どもたちもたらす悪影響、そして子どもたちに「普通」を脱してもらうための方法について、塾長の塚﨑からお話しします。
もくじ
子どもたちが抱える「普通」への先入観とは
不登校・ひきこもりなどの悩みを持つ生徒に多くみられるのが、「人生=ストレートでなければならない」という考えです。
これは一言で言うと「ストレートな進学⇒ストレートに企業就職⇒定年退職までホワイト勤務⇒年金生活」というようなものです。
そして、そんな「人生=ストレート」を信じているからこそ、「レールから外れた自分=もう未来はない」という人生に対してネガティブな考えを抱いてしまい、なにも行動する気がなくなってしまっているケースが多いのです。
※多くの生徒が思っている「普通」の具体例
・小中高は普通に通学して問題なく卒業しないとダメと思っている
・高校はもちろん「普通」高校(だって、ふつうがいいから!)
・偏差値が高い学校へ入学すれば勝ち組
・もちろん大学は最低GMARCH(ただし、大学で何をするかは知らない)
・大学には浪人なしでストレート合格しないとダメ
・就職は、少なくとも上場企業(の総合職)もしくは公務員以外、ダメ
・これらストレートのレールから外れたら生きる術はない
・レールから外れたらレールに戻るのは難しく、レールに戻れないと最悪餓死
学校教育の中では、子どもたちが社会について知る機会はほとんどありません。上記の「普通」の価値観を誰が形作ったかというと、保護者さまや進学塾の影響が大きいと言わざるを得ません。
(詳しくはこちらの記事もご覧ください)
言うまでもないことですが、その人にあった働き方があり、全員が上場企業へ入社しなくても・公務員として働かなくてもよいわけです。
我が家の場合、父は「みんなのために働く」ことに生きがいを感じて、民間から公務員へ転職し、そこで定年まで働き続けましたし、今でも地域に根差した活動を続けています。
私も一瞬だけ公務員として働いたことがありますし、会社員としても働いたことがありますが、紆余曲折あって今は、ビーンズを起業することで楽しく働いています。
つまり父にとっては民間企業よりも公務員で働くことが向いていたのでしょうし、私は民間で勤めるよりも公務員として仕事するよりも、起業することが向いていたのだったというだけで、適性や正解は人それぞれなんだと思います。
受験勉強だけに絞ってみても、当たり前ですが子どもたち全員がGMARCHへ進学する必要はないですし、総合大学へ入学する必要もありません。
自分がやりたいことが明確なら、大学の学部を絞るのも、専門職大学・専門学校に行くこともありかもしれません。子どもの性格によっては海外の学校に通うことですごく楽しめるかもしれません。
選び方も「将来から逆算して」選ぶのが好きな子もいるでしょうし(キャリア官僚になるために東大行きたい!という選び方も、その子が望めばOKです)大学で自分がやりたいと思っていることや、やってみたいと思っていることがあればそれを軸に選んでもいいですし、受験テクニック的に自分の好きな科目、得意な科目で選び、その方面に重点を絞った勉強をしていくことだって不正解ではありません。
要するに、自分に合った道を見つけて、今の自分が楽しめる道をつどつど選んでいけばよいのであって「〇〇しないとダメ」とか「普通でないといけない」ということで、選択肢をはじめから狭めてしまうことがいけないと思っています。
子どもたちの「普通」の先入観を外したい理由
さて、このような話を子どもたちにしたら・・・もちろん子どもたちは頷きません。それどころか、急にこんな風に言って、首をひねります。
「え、でも、それって普通じゃないですよね・・・? やっぱり勉強して、みんなと同じように、普通の良い大学に行かないとダメなんじゃないですか・・・?」
これは無理もない話なのですが、親や進学塾で「成績絶対」という価値観をずっと指導されてきた子どもたちほど、「これくらいテストの点数がとれて・これくらいができて普通。できていない僕はダメだ」というような偏った「普通」を強く抱えてしまっています。
なぜ「普通」への先入観を外さなくてはいけないかといえば、前述の通り、生徒たちが「普通から外れた=自分は何をやってもムダ」と、頑なに信じ込んでしまい、行動を起こさなくなっているからです。
いわゆる「普通」を信じすぎている生徒は、往々にして、「普通の子どもたちは普通に学校へ通っているのに、自分は普通に学校に通うことすらできない、普通ではない存在」と考えてしまいます。
そして、「自分は普通のレールから外れてしまった、ダメな人間・無能な人間・無価値な人間である。だから、これから先、自分は何を頑張っても、もう普通にはなれないし、うまくいきっこない」といったマイナス思考・自己卑下の極みに至り、結果として、将来のことを何も考えられなくなり、行動を起こすこともできず、なにも改善できない状況がずるずる続いてしまうのです。
今の社会に生きる大人たちは、果たしてたった一度の挫折もすることなく、誰とも揉めることなく、ほんの一つの障害もない進路をただ真っ直ぐと進んでこれたのでしょうか。答えは「ノー」であることは、ほとんどの大人が頷ける話だと思います。
そのため、学習支援塾ビーンズの『学び治し』の授業では、まずは生徒が持つ「これが普通なんだ!」という思い込みを外し、柔軟な考え方ができるように生徒の社会常識を広げることを重要視しています。
生徒の「普通」への先入観を外すワークとは
生徒の「普通」への先入観を外すワークでは、生徒の誤った思い込みを解きほぐすため、色んな話題をテーマにして、とにかく生徒と話し合っていきます。具体的には、生徒が「普通」だと思っていることを話してもらって、それを一つ一つ、社会で起きている現実と突き合わせていって、丁寧に解きほぐしていきます。
ワークシートには、各行ごとにテーマを定めて、矢印の下側に生徒が「常識だと思っていること」や「ネガティブに思っていること」を書き出していきます。そして、矢印の上側には、講師が「こんな考え方もあるよ」、「それだけが正解ではないよ」というように、生徒の常識を相対化する意見を書き出していきます。
ワークシートに一通り書き出した後は、生徒の考えを一つずつ確かめていき、「ネガティブに思い込んでいたことについて、今はどのように思っている?」と尋ねていきます。これにより、生徒の「普通」への先入観を外し、認識を少しずつ変えていくことができるようになります。
授業で使った生徒たちのワークシートです。
生徒 | 現実 |
---|---|
普通は高校卒業したら大学へ行く | 高校卒業後の大学進学率は約50% |
普通は大学を卒業する | 大学へ入学しても中退者は約2~4割もいる |
普通は定年まで同じ会社で働く | 大卒者が入社後、3年以内に離職する確率は30%前後と多い |
大学へ受験合格できない=何もできないダメ人間である | 将来を考えて、受験ではなく、高卒後、専門学校や社会で働く道を選ぶ人は多い |
公務員なら一生、安泰だ! | 公務員でも退職する人はいる(激務で倒れるような職場もある) |
一度でも挫折したら人生は終わりだ | 挫折を克服して人生を充実させている人はたくさんいる |
ろくな高校・大学にも進学できない自分に未来なんかない | ろくな高校・大学でなくても社会で活躍している人はたくさんいる |
自分は今後、挫折・失敗しかしない | じつは大人だって挫折・失敗は繰り返している |
▼離職率の参考データ 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」 |
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▼大学進学率の参考データ 文部科学省「平成27年度学校基本調査(確定値)の公表について」 |
ワークシート以外で「普通」を外す方法
学習支援塾ビーンズでは今回のようにマンツーマン形式のワーク以外にも、子どもたちが「普通」を客観視して、外せる仕掛けをたくさん用意しています。
例えば、実際に色々な職種・生き方をしている現役社会人や、大学生などセンパイに会って、色んな話をざっくばらんに聞く「センパイインタビュー」の時間。
かしこまった形ではなく、雑談の中でこそ、子どもたちが「あ、こういう生き方があるんだ」と気づいてくれる可能性が高まります。
また生徒同士で、自分たちの進路について話し合う「グループワーク」の授業もしています。
この時のポイントは、子どもたち同士で意見交換をして、自分ではなく他人の進路について考えてあげることです。
同世代が進路についてどのように考えているのか、何に悩んでいるのかといった情報に触れることで、子どもたちが「自分の考えが狭いものだったのかもしれない・・・」や「他人が自分も似たような悩みを抱えているけど、他人ごととして聞いてみると、こういう考え方もあるな」と気がつき、信じていた「普通」がすべてではないことを意識するようになってくれます。
こういった経験が不登校・引きこもりの改善において、とても大事な一歩になります。