児童精神科医 三木崇弘 先生自己紹介 「三木ゼミについて・ビーンズでやりたいこと」
もくじ
児童精神科医 三木崇弘 先生自己紹介 「三木ゼミについて・ビーンズでやりたいこと」
基本プロフィール
■名前
三木崇弘(みき たかひろ)
■役職
三木ゼミ担当
■ビーンズ外での活動
児童精神科医。それ以外でも、『モーニング』連載中の漫画『リエゾン-こどものこころ診療所-』で監修を務めたり(ドラマ版の監修もしています!)、本を書いたりしてます。
■経歴
2008年 愛媛大学医学部卒
2013年 国立成育医療研究センター こころの診療部 フェロー・医員
2019年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 博士課程 修了
2022年 早稲田大学ビジネススクール修了
2023年 『リエゾンーこどものこころ診療所ー 凸凹のためのおとなのこころがまえ』執筆
ビーンズでやっていること~三木ゼミ
あらためまして、児童精神科医の三木です。
この記事では僕がビーンズでやっていること、僕のプロフィールについて紹介していきますね。
僕の場合、児童精神科医としての肩書がどうしても目立ってしまいますが、ビーンズでやっていることのメインは大学生インターンたちとの月1回程度の対話です。
大学生インターンたちとの対話
本記事では分かりやすいように、三木ゼミと呼称していますが、ビーンズの大学生インターンたちは、「MDMC」とネーミングしているようです。
なんでも、「Monthly Dr.Miki Conference」の略だとか……笑
三木ゼミでは、「大学生インターンたちから生徒対応・保護者対応について相談をうけ、僕の臨床の経験からアドバイスをする」といったことをやってます。
ただ、これが全てではありません。
「そこにいるみんなが同じ目線になって、自分と他人の悩みについて、あーでもない こーでもないと一緒に対話していく」という時間がメインです。
ビーンズの大学生インターンたちって、活動的で賢くて責任感が強いからこそ、ビーンズで出会った深刻な状況の子どもについて深く考えてるんですよ。
一方で、考えすぎてしまうところもあると思ってて。
生徒だけでなく自分自身の進路や生き方についても深く考えているからこそ、考えすぎて悩んでしまってしんどくなってしまうときもあるんじゃないかな…と感じています。
なので、二回り以上世代が上の僕がその悩みの輪の中に入り、一緒に悩むことで彼らも「(大人になっても)こんな感じで悩み続けていいんだ!」と思ってもらえるかなーと思って参加しています。
つまり、三木ゼミ役割は
「大学生のメンタルをやさしくやさしくケアする時間」
「大学生の悩みを児童精神科医で年長の三木が解決する時間」ではない
ということです。
※結果としてそうなっていることもあるかもしれませんが、目指しているものではありません
若い頃って本当に「あーでもない こーでもない」と悩みますし、その悩みへの「解決策」なんて求めても簡単には見つからないものだと思っています。
大事なのは、「悩み続ける自分と向き合っていくこと」なのではないかなと思います。
ただ、「悩み続ける自分と向き合う」って一人ではなかなかできないものです。
なので、僕と大学生で対話の場を作って、自分と周りの人の悩みを聞き、それに対してあーでもない こーでもないと思ったことを素直に言ってみます。
三木ゼミを通じて、こらえたくないのにこらえていた想いや悩みを(涙ながらに)吐露できた大学生たちを見ると「やっててよかったなあ」と思います。
そして、そういった場が、今度は大学生同士で作っていることを聞くと、本当にうれしいですね。
コロナ世代の若者の内面についての探求
さて、ここまで読まれた方の中には
「大学生たちの悩みをひたすら聞くって楽しいの?」
って思われた人もいらっしゃるかもしれません。
気持ちは分かります…
ただ、僕はかなり興味深く参加させてもらっています。
一言で言うと、「最近の若者の課題について体感できる環境に身をおける」ということに魅力を感じています。
今さらですが、僕は普段、小学校低学年から思春期の発達障害・知的障害・精神疾患・不登校・問題行動に悩む子どもたちと接しています。
ビーンズにやって来る子どもたちの属性とも一部近い部分もあるかもしれません。
また、最近までは早稲田大学のビジネススクールにも通っていました(理由とか背景は話すと長くなるのでまた別の機会で笑)。
そこで接するのは僕と同年代の社会人や僕より年上の教員でした。
本業でも割と単独で動くことが多いので、若い部下もいません。
要するに、大学生~20代の若い人たちと深く対話する機会がないんです。
でも、先述の早稲田のビジネススクールのゼミの友人がZ世代についての論文を書いているのを横で見て、「わ〜、今の若い子らは今こんなことになってんねや!」と思っていました。
なので、いつかそんな若い世代の人たちと接してみたいと思っていたわけです。
ですから、三木ゼミはそんな思いを抱えていた僕にとって、ありがたい環境なんですね。
また、三木ゼミ以外でも、代表の塚﨑さん・副代表の長澤さん・人事統括の山本さんというビーンズ経営陣との対話が本当に学び深いですね。
彼ら(ビーンズ経営陣)はZ世代およびその少し上の世代をひっくるめて「Z+α世代」、通称「ザルファ世代」と呼んでいます。
そして、ザルファ世代が抱える内面の課題やその対応策について理論化しようと試みています。
その一端については、長澤さんとの対談児童精神科医 三木崇弘×学習支援塾ビーンズ 長澤が語る「若者(ザルファ世代)の悩みの本質」でもお話していますので、ご覧になってみてください。
特に、「コロナ世代の大学生」はそれ以前の大学生と全く違う心理的構造を持っている傾向があると、塚﨑さんから聞いたときは、自分の中でモヤモヤしていたものが少しまとまった気がしました。
僕たち上の世代の「自分の若い頃はこうだったよな~」という常識がザルファ世代には通用しないなか(三木ゼミを通じて本当に体感ベースで実感します)、
それに関するディスカッションを深めていくのは大学院時代を思い出してとても楽しいです。
ビーンズと僕で作り上げた考え方が、いろんな企業の人事担当者に広まったらいいなぁ……と、夢見ています。
三木ゼミは「あーでもない こーでもない」と話せ時間
ここからは、個人的な話なのですが……。なんで三木ゼミをつくったかについて、少しお話したいなと思います。
僕らが過ごす日常生活の中で「みんなで社会の出来事とか、自分が悩んでること、キャリアの話をあーでもない こーでもないとグダグダ言える空間」って、そんなにないじゃないですか。
僕も学生時代は「人生路頭に迷ってます……」みたいな期間が(実は)結構長かったので…(笑)
何かそういうのを考えたときに、そういうみんなでグダグダできる空間をつくりたいなと思ったんですね。
最近ですが、早稲田のビジネススクールでゼミの友人や教授たちと「あーでもない こーでもない」と話すのが本当に楽しくて。
「これだ! あーでもない こーでもない と言い合える環境が大事なんや!」と思ったんです。
その経験から(飛躍しちゃうんですけど)「将来、大学教員になってゼミを持ちたいなー」って、すごい思ったんですね。
それが三木ゼミをつくった背景というか、想いの部分です。
三木ゼミでは、そのおぼろげな夢が半分実現した気がしてうれしいです。
三木ゼミに参加した大学生インターンたちの声です。
・保護者対応初級者の僕の疑問にもめちゃくちゃ真剣に考えて答えていただきました...!
・目から鱗の情報で溢れてました!
個人的に特に印象に残っているのは「保護者のコンディションにアプローチをかける」「保護者対応をする人のキャラクターを活かす」です...!・失礼になってしまうかもしれないんですが、一瞬たりとも緊張せずにお話させていただけました。
緊張する場だと普段通りに頭が回らないので、リラックスした雰囲気で保護者対応について色々考えられたのが僕にとっては凄くありがたかったです!・長澤さんのいつもの謎の擬音語「ぽにゅぽにゅ」を面白く返していただけるのも地球上に三木先生だけだと思いました。
「ぽにゅぽにゅ」が面白くなるという超絶貴重なシーンを見ることができて感謝です
ビーンズと出会うまで
課外活動での熱い青春
生まれは姫路です。
中高は、地元の進学校に入学しました。
かといって何かをとても頑張るわけでもなくフワフワとした生活をしていました。
大学受験は、(詳細は話すと長くなるので割愛しますが)奇跡的に上手くいって(笑)
現役で医学部に入学することができました。
ただ、入学後に、もともとあまり「医学」に興味がなかった……という致命的なことに気づいてしまいまして。
……大学入学早々に、自分の目指す方向が分からなくなってしまいました。
(多分ここは今の大学生の皆さんも共感してくれる方、多いんじゃないでしょうか……)
ただ、運がよかったのは、大学の課外活動と、そこにいる仲間には恵まれたことです。
僕は合唱団に所属していました。
そして合唱団の活動に打ち込みました。
どれくらい部活に打ち込んでいたかというと…
部長を務め、他大学の合唱部との交流や連絡に汗を流し、さらに趣味で始めたアカペラの自主イベントを企画する……くらいには打ち込んでいました。
ビーンズでいうところの"熱い青春"ですね。
あの日々があったから、(結果として)医学部も辞めずに済んだし、今の自分の大切な部分も育まれたと思っています。
一方で、課外活動にここまで打ち込むということは…医学部生である自分の主戦場であるはずの学業には全く取り組んでいないということになります。
当然、授業には全く行かず、学校には部活にだけ行っていました。
2回留年もしましたし、
(部活がどれだけ充実していても)どこかに"後ろめたさ"みたいなものはありました。
グルグル期
当時の自分を振り返ると…
・自分にとって「やるべきこと」が全くできていないので自信がない。
・かといって「やるべきこと」は勉強の積み立てがないから理解ができない。
・理解ができないから、興味が湧かない。
という悪循環にはまっていました。
じゃあ医者になる道を捨てて、違う何かになる道に進むのか。
…と言われると、それも自分としてはあまり納得できていないしイメージも湧かない……。
そうやって、都合4年くらいはグルグルしている日々を送りました。
そうこうしているうちに大学6年目になりました。
先に卒業していく元同級生たちを見送る中で
「ここまできたら医師免許を取らないと本格的に食っていけない」という危機感を覚えて…
そこから2年でなんとか卒業、医師免許獲得に至りました。
でも慌てて詰め込んだ、しかも興味が持てないジャンルの知識って、ぽろぽろと手からこぼれていくんですよ。
大学を卒業し、研修医になって、なんとか湧いてきたやる気や希望も確かにありました。
でも、それとは裏腹に、自分のできなさ・情けなさと向き合う2年間がまた始まった感じでした。
現場での"出会い"が変化を起こす
それから小児科医になり、現場で子どもや親御さんと向き合うなかで、自分の中に変化が出てきたんです。
日々の臨床現場の中で「これだったら少し興味があるかも」と思う出会いがありました。
…そして、そこからさらに児童精神科に専門を絞り込むことにしたんです。
そこから数年経つ頃には、仕事への興味も自分の仕事に対する手応えも、どちらもそれなりに得られるようになったと思います。
それからフリーランスになったり、学校でスクールカウンセラーをしてみたり、ビジネススクールに通ったり…と比較的自由なキャリアを歩んできました。
「児童精神科ってハードな現場でしょ?」と思われる方も多いと思います。
確かに、ハードなことは日々たくさんおこる現場です。
でも、私にとっては、ここが「自分が頑張る場所」だと思える現場でもあります。
今は普段の診療に加えて、漫画やドラマの監修・本の執筆・講演・ビーンズでの活動など、やることがたくさんあってとても楽しいです。
ビーンズと出会ったきっかけ
最後にビーンズと出会ったきっかけをお話しします。
塚﨑さんと人づてに知り合ったのは、2019年頃だったと記憶しています。
その頃はまだ塚﨑さんが一人で悪戦苦闘しながら運営しているイメージでした。
ちょうどいわゆる個別指導の学習支援塾から脱却して、今のビーンズになりかけているころだったと思います。
とはいえ最初は手探りで活動されていて、かなり悩みながら運営していた……ように記憶しています。
あと、とにかく子どもたちをウェルカムしている空気が記憶に残っています。
子どもも、ビーンズ自体も悩みながら試行錯誤していくことを受け入れているスタンスがいいな~と思っていました。
ただ、その頃はまだ深く関わることはありませんでした。
関係が深くなったのは2022年ですね。
最初、塚﨑さんと長澤さんと僕の3人で謎のオンライン飲み会が催されました。
最初は「ずいぶんとうるさい賑やかな若手が入ったな」と思ったのですが、話してみるといろいろと深く考えてはいるようだと。
そうこうするうちに、山本さんも輪に入ってきて。
長澤さんや山本さんみたいな優秀な若手が入ったことで、運営も生徒対応もかなり体系化されてくるんだろうなと感じました。
で、そのオンライン飲み会で、長澤さんからダル絡みされて(笑)、ビーンズと定期的に関わりを持つようになりました。
そして気づけば三木ゼミが出来上がり今に至ります。
さいごに
むすびに代えて、僕が今後ビーンズでやっていきたいことについてお話しします。
一言で表すと、「ザルファ世代の悩みとその対応方法」について探求し、何らかの形で世に送り出すお手伝いがしたいです。
ビーンズが積み上げてきたザルファ世代の悩みに対する考察はまだ誰も気がついていないものではないでしょうか。
※ザルファ世代の悩みについて、以下の記事でお話しています。
今後も三木ゼミなどを通じてビーンズの大学生インターンたちとの対話を重ねて、彼らと一緒に探求をしていきたいです。