「悩める10代」の検定試験・習い事への挑戦。サポートのキーワードは「トライ&エラー」と「ピボット」!
この記事では、ビーンズ塾長 長澤が「悩める10代」が検定試験や習い事に取り組むにあたって、保護者さまにぜひご留意いただきたい点・サポートの心構えを「ビーンズメソッド」に基づき、分かりやすくお伝えします。
長澤啓(Nagasawa kei)
学年ビリから二浪し東京大学へ入学。ビーンズの活動が楽しすぎ、留年。経済学部経営学科卒。
副代表として、講師の採用育成プランの策定・外部協力者との渉外・経営企画までマルチにこなしながら、日々「ビーンズメソッド」を洗練させている。
さらに、親との衝突が絶えなかった自身の経験を活かし、保護者さまと月100件以上やりとりを実施。趣味はビールを飲みながら出汁巻き卵をつくること。
■インタビュー/詳しい自己紹介
・学校の勉強についていけなかった僕が東大に合格するまでと親と対立した日々について
・勉強へのやる気が出ない中学生を変えるために親ができることを学習支援のプロに聞きました
・プロに聞きたい!不登校や勉強嫌いな中学生・高校生が進路を選ぶタイミングで、親に何ができるの?
もくじ
検定試験について 保護者さまにお願いしたい三つのこと
検定受験に際し、保護者さまにお願いしたいことが三つあります・・・
1.子どもが"チャレンジする"と決めたことをほめてあげること
この記事を読んでいらっしゃる保護者さまの中には、
「え……チャレンジすると決めただけでホメるの…?」
「ただ、(子ども自身がやりたいと言った)検定試験を受けるのにホメるの…?」
と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そもそも論を言いますね。
悩める10代が「不合格という失敗へのリスクと、受験までの準備というコストを引き受けて」検定試験に挑戦すること自体がすごいことなのです。
これには、日本の若者の自尊心の低下傾向が深く関わっていると考えています。
この話をするには、どうしても前提として「日本の子ども・若者の自尊心がどうなっているか」についてお話ししないといけません。
説明が長くなってしまいますが、お付き合いください。
まず、日本の子ども・若者の自尊心は諸外国と比べて低く、その上年々低下傾向にあります。
例えば、ユニセフが2020年に公表したレポートカード16(子どもの幸福度に関する報告書)によると
・「精神的幸福度」はワースト2位(38カ国中、37位)
・「生活満足度」もワースト2位
・「すぐに友達ができると答えた」子どもの割合もワースト2位
とあります。
こういうデータは枚挙にいとまがありません。
次に内閣府が行っている日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン計7か国の13歳から29歳までの調査を引用したいと思います。
日本の若者は、諸外国の若者と比べて、自分自身に満足していたり、自分に長所があると感じていたりする者の割合が最も低く、また、自分に長所があると感じている者の割合は平成25年度の調査時より低下していた。
国立青少年教育振興機構による「高校生の留学に関する意識調査報告書」という”留学”についての調査でも、諸外国の高校生と比べ、日本の高校生の自己肯定感が低いことがみてとれます。
自己肯定感に関連する7項目では、日本の高校生は、「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」「今の自分が好きだ」に対し、「よくあてはまる」「まああてはまる」と回答した割合がいずれも約5割にとどまり、米中韓に比べて際立って低い。一方、「自分はダメな人間だと思うことがある」の肯定率が8割弱と、米中韓に比べて著しく高い。
出典:国立青少年教育振興機構高校生の留学に関する意識調査報告書 -日本・米国・中国・韓国の比較 p36
ここまで日本の若者の自尊心の低さについて説明してきました。
そして、この自尊心の低さが「失敗へのリスクと、準備というコストを引き受ける」ことへのハードル……
つまり、「リスクとコストを引き受ける"挑戦"へのハードル」となっていると考えています。
もちろん「挑戦」と言っても色々あります。
概念の定義をすることは本稿の目的ではないので、ここでは、挑戦と概念の定義を”今の自分の身の丈を超えた何かを実行すること”くらいで捉えておきます。
例えば、「挑戦」の代表例として、”留学”を挙げます。
出典:文部科学省 "若者の海外留学を取り巻く現状について"
このデータを見て驚いたのが、留学する大学生の人数のピークが2004年だったということです。
2004年に大学生というと2023年現在において30代後半~40歳前半……。
ちなみにiPhone(初代)の発売が2007年ですから、iPhone(スマホ)以前の世代が留学という挑戦するピークだったことには、何か示唆的なものを感じます。
外国留学への意識についてみると、日本の若者では、「将来外国留学をしたいと思いますか」との問いに回答した者の割合が最も高かったのは「外国留学をしたいと思わない」の53.2%であり、外国留学を希望する者の割合は、諸外国の若者と比べて最も低かった。(図表12)
出典:内閣府 令和元年版 子供・若者白書(全体版)特集1 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01honpen/s0_1.html
留学希望のある者のほうが、「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」「得意なことをもっている」「打ち込みたいことがある」に対し、「よくあてはまる」と回答した割合が高い
出典:国立青少年教育振興機構高校生の留学に関する意識調査報告書 -日本・米国・中国・韓国の比較-p38
……このデータからわかることは何でしょうか?
文科省の調査「自己肯定感を高め、自らの手で未来を 切り拓 ひら く子供を育む教育の実現に向けた、 学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言参考資料)」にも自己肯定感と挑戦心には正の相関があることが考察されていますが、「得意なことをもっている」「打ち込みたいことがある」ゆえに、「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」…。
つまり、自尊心が高い若者が留学するということではないでしょうか?
ここまでデータを用いて説明してきましたが、どのデータを見ても、
・諸外国と比べて日本の若者は自尊心が低い傾向にあり、年々さらに低下傾向にある
・自尊心と挑戦心には関連があると考えられ、自尊心が低い状態での挑戦は難しい
⇒日本の若者にとって挑戦すること自体ハードルが高いことになっている(そしてどんどんハードルが高いと感じる若者の割合も増えている)
日本の子ども・若者にとってリスクとコストを引き受けて挑戦することが難しくなってしまっている現状がお分かりいただけたでしょうか?
自尊心が下がり挑戦が難しくなっていることは日本の若者全体の傾向です。
お子さまの周りのお友達やクラスメイトなども、同じような状況である可能性が高いです。
ですから、子どもたちが「挑戦する=周りから浮いた行動を取る」といった感覚を持ってしまっていることも十分にあり得ます。
だからこそ、お子さまが検定試験(や何か新しいことに)挑戦しようと宣言した場合、まずは「挑戦しようと決めたことでのみ」でお子さまを全力で褒めてあげていただきたいのです。
「挑戦するだけで、めっちゃ褒められる!」という経験を子どもに積ませてあげて欲しいのです。
それだけで、子どもにとって「挑戦してみる」と言うことのハードルがググっと下がるはずです。
2.チャレンジを決めたのに頑張れない子どもを受け入れてあげること
子どもが自分から「頑張ってみる!」と決めたから応援してみたけど……結局、蓋を開けてみると「全然勉強しないじゃん!」というパターン、正直とても多いです。
お子さまが自らやる気を出してくれることは、保護者さまからすればとても嬉しいものですよね。
そして、お子さまが自らやる気を出してくれたからこそ、期待してしまうのは自然な感情です。
だからこそ、お子さまが頑張れなかったとき、子ども自身と同じように、保護者さまもがっかりしてしまうのではないでしょうか?
…まず、挑戦の当事者である子どもたちも「頑張ってみる!」と宣言したときは本気でやり遂げようとしているんですよね。
しかし、まだまだ子どもな彼らは見通しが甘かったり、ちょっとの頑張りで「いやー俺、凄く頑張った(疲れた)」となってしまったりします。
「自分で決めた挑戦もできないなんて、ありえない!」と思う、気持ち分かります。
分かりますと言うか……僕らも毎日感じています。
ただ、ビーンズをやって、数多くの生徒、そしてインターン生と触れあってみて、そして多くの若手起業家や、官僚、弁護士たちと話してみて、確信になったことがあります。
それは……
「人間は、自分で決めてもできないことが多いものだ」
ということです。
「・・・そんな身も蓋もない」と思われた方はごめんなさい。
でも、例えば、ここに若手起業家がいたとします。
彼が年始に「これは絶対にやるんだ!」と言った内容で、年末までに叶うのは、大体3~4割が関の山だと思います。(少なくとも私の周りの若手起業家は)
若手起業家は、みんな優秀です。(少なくとも私の周りの若手起業家は)
しかも、子どもの挑戦と違って生活がかかっています。(これは起業家ほぼ全員ではないでしょうか)
頑張らなければ生活が行き詰まる可能性や、周りからの信頼を損なってしまう可能性があります。(これも起業家ほぼ全員だと思います)
しかし、それでも3~4割しか実現しない。
そもそも実行するのも6~7割かもしれません。
もちろん、3~4割しか実現しないと、起業家自身が困ります。
では、どうするか。
また、別の成功可能性が高いアイデアを「これを絶対達成する!」と臆面もなく言ってのけて、実行するのです。
もちろん、そのアイデアも6~7割しか実行しないし、3~4割しか実現しません。
でも、それを繰り返していくうちにバシッと自分の能力やチームにハマるアイデアに出会います。
そして、そこでバコーンと跳ねる(成功する)のです。
ここで大事なのは…
何度も何度も「これを(本気で)やるぞ!」とトライし、「ダメだった……」というエラーを乗り越えること。
そして次のアイデアに臆面なく「これを本気でやる!」と宣言し、トライすること。
つまり、トライ&エラーをくりかえしていくことです。
それには、ストレス耐性・打たれ強さ、カッコよく言うと「レジリエンス」が必要です。
しかし、日本の若者の自尊心の低下傾向は先に見た通りです。
「ストレスやプレッシャーに弱い」
これが、平均的な日本の若者のリアルだと思います。
ストレスやプレッシャーに弱いから、すぐにめげてしまいます。
でも、めげてしまっては、トライ&エラーができません。
トライ&エラーの先に自分の好きで得意なことを見つけてバコーンと成功するのです。
ですから、子ども達がトライ&エラーできるように、彼らが情けない姿を見せたときこそ、保護者さまには「そっか、辛いか。」と淡々と接してあげていただきたいのです。
子どもが自ら掲げた挑戦を挫折してしまったとき、彼らは誰から何を言われるまでもなくプライドが傷ついた状態になっています。
そんな状態の中、一番認められたい存在である保護者から
「結局続かなかったんだ」
「自分で決めたこともできないんだな」
などと言われてしまった時には、失敗が怖くて次の挑戦に意識を向けることは到底できなくなってしまうでしょう。
ですから、チャレンジを決めたのに頑張れない彼らを受け入れてあげることが、子どものチャレンジを後押しすることに繋がるのです。
3.毎日小さな結果をほめてあげること
反対に、子どもがほんのちょびっとだけでも頑張ったことは全力で褒めてあげてください。
「子どもが自分でこの習い事や検定試験をやると決めたのだから、当たり前」
「子どもが「僕は本気なんだ!」と言ってたのだから、当たり前」
「子どもの検定試験のレベルに比べて、まだレベルの低い・基礎レベルをやっているのだから、当たり前」
と思わずに、「当たり前でしょ。だからホメるに値しない」の一言で片付くようなことを褒めてほしいのです。
「問題集1ページやった」
「とりあえず検定の参考書買ってきた」
「検定の日程と会場調べた」
など、なんでもOKです。
大人の我々からしたら大したことをしていなくても、いままでなんのアクションも起こしていなかった彼らからすれば大進歩なのですから。
保護者さまには彼らの成果ではなく成長しようとするスタンスを見せたことをほめて頂きたいのです。
子どもがこのスタンスを持って行動を続けていれば、少しずつですが着実に行動に見合った成果が後から付いてきます。
ですから、成果に着目して褒めるのではなく行動を起こそうとするスタンスに目を向けてあげてください。
そして何より、チャレンジすることに憶病になってしまっていた悩める10代が
「もっといろんな知識を知りたい」ただ……お子さまが自分で決めた挑戦をやり遂げられなかった場合……
「合否が出るのはすごく怖いし、ストレスだけど、挑戦してみたい」
と、思ったうえでの大決断です……!!
どうぞお子さんの頑張りを温かく見守ってあげてください。
習い事について 踏んでほしい4STEP
検定試験受験と一緒に考えたいのが、子どもにとってメジャーなチャレンジの場である習い事についてです。
内容にもよりますが、習い事は検定試験ほどの厳しく評価されることもあまりなく、一見ハードルの低いチャレンジにも見えます。
しかし、実際に保護者さまから相談を多く受けるのは検定よりも習い事についてです。
検定試験は受かればその時点でチャレンジ終了(場合によっては受からなくても受けた時点で終了)の短期~中期間のチャレンジであることがチャレンジを決めた時点から目に見えています。
また、「検定試験に合格する」という目標や「どうすれば合格できるか」といったゴールまでの道筋が明確です。
一方、習い事はというと、目標もゴールまでの道筋も決まっていません。
例えば、野球チームに所属していたとしても
「速い球を投げたい」「色んな変化球を投げれるようになりたい」「バッティングが上手くなりたい」
など、個々人で目指す方向も練習方法も変わってきます。
それ以前に、明確な目標を持って習い事に取り組む気概がある子どもがどれだけいるでしょうか?
子ども時代から高い志を持って習い事に取り組むことは多くの人にとって、かなり難易度が高いことではないかと思います。
ここまでのお話だけでは
「別にそこまで高いレベルは求めないし、普通に取り組んでくれればいいんだけど...」
とお思いかもしれません。
ですが、目標もやりがいもないことをただ続けることはとても難しいことなんです。
これは子どもに限った話ではありません。
「勉強しておいて損はないだろう」というだけの理由で何かを漫然と勉強し続けることができる人は大人でも少ないのではないでしょうか?
「できる」という人も、きっと関連の資格取得を目指すなどの短期目標を設定したり、同じ目標を持つコミュニティの中での楽しみを見つけたりと、何かしら勉強し続けるための方策を取ることが多いと思います。
要するに、目標設定したり、やりがいを見つけたり、それらを達成するための作戦を立てたりと、習い事は「自分との闘い」の要素が検定試験に比べて強いため、子どもにとってはハードルが高いのです。
ですから、お子さまが習い事を通して挫折や成功体験など、人生を豊かにする経験を積むには、保護者さまのサポートが必要不可欠になってきます。
ということで、まずは小学校高学年・中学生(高校生)が習いごとを選ぶときの保護者さまにとっていただきたい手順について概要をサクッと紹介します。
「悩める10代」と習いごとを選ぶときの手順
STEP1:習い事は子どもが興味が向いている(楽しめそうな)ものを選ぶ
STEP2:入会を期待せず、体験や見学をする
STEP3:子どもが選択に悩んでいたら、大人が子どもの悩みを整理する
STEP4:子どもが習い事に入会した後の親の心がまえは「楽しんでくれればいいな&いつ辞めてもよい」と思うこと
本記事で想定している子ども像について、あらためて確認すると「思春期」以降の子どもです。
大体小学校4年生以降、中学生(~高校生)くらいでしょうか。
小学校4年生以前であれば、自分の考えを素直に親に伝えることのハードルが比較的低いので、親があれこれ頭を悩ませる前に、親子間でのコミュニケーションを十分に取って、子どもの意向を聞くことが最も有効な手立てかと思います。
思春期以降の場合は親子関係が変化します。
また、子どもも内面に様々な心配や不安を抱えるようになります。
ですから、親子間のコミュニケーションを十分に取ることは変わらず大事ですが、子どもの変化に寄り添った形での習い事を決めるサポートや習い事を始めた後の親の心がまえも重要になってきます。
そこで、以下のSTEPをご参考いただき、お子さまの新しいチャレンジを後押ししていただければと思います。
STEP1:習い事は子どもの興味が向いている/楽しめそうなものを選ぶ
まず、「どんな習い事を選べば良いのか?」という質問への答えです。
それは…「お子さまの興味が向いている/楽しめそうなものを選びましょう」です。
ある習い事に、お子さまの興味が向いていない/楽しめそうにない状態で無理に挑戦させるのは、おすすめしません。
習い事に限らず、子どもたちが何かしらのアクションを起こすにあたって、「その対象に興味が向いている状態である」ということは何よりも大切です。
なぜなら、「興味がある」「楽しい」というポジティブな感情こそ、子どもたちの最大の原動力であり、同じ時間を過ごしたとしても得られる経験の量が違うからです。(もちろん結果にもつながります)
お子さまが興味を持っていない状態で「親や周りの大人から勧められたから」という理由で習い事を始めた場合、
原動力たる「興味がある」「楽しい」という感情がないまま続けざるを得ない状況ですから、仮に長い時間を過ごしたとしても得られる経験は、多くないでしょう。
すごく浅ましい言い方をすると、「タイパ」が悪いのです。
そのような「タイパ」が悪い状況が続くと、お子さまの中で「習い事=親が勧めてくるつまらないもの」という認識になってしまい、習い事というもの自体に嫌悪感を示すことに繋がり得ます。
お子さまが興味を持っていることがあれば、まずはそれを最優先に習い事を選ぶ。
子どもが習い事に興味を持っていない場合は、強いて続けさせる必要はありません。
STEP2:入会を期待せずに、体験や見学する
また、現状お子さまが興味を向けるような習い事がないけれど、時間を持て余していて退屈そうにしている場合など、「なんでもいいから挑戦してみてほしい」というケースもありますよね。
そういった場合には、まずはジャンルも特色もバラバラで良いので、色んな習い事教室に体験や見学に行ってみることをお勧めします。
なお、体験や見学に行く際、お子さまが入会することを期待しないようにしてください。
何件も体験や見学に連れて行っても習い事を始める様子がないと「せっかく連れて来てるんだから、そろそろ一つくらい始めてほしいな」とお思いになるかもしれません。
そんな時、子どもは驚くほど親や周りの大人の様子を伺っているものなので、「お父さん/お母さんはこの習い事を僕に勧めたがってるんじゃないかな」ということを感じて習い事を始めるということも起こり得ます。
そうなった場合、先述した「親や周りの大人から勧められたから」という理由で習い事を始めるのに近い状況をつくり出してしまうことになります。
ですから、習い事に入会するかどうかは最大限お子さまの意思・直感に委ねる。
この点は押さえておいていただければと思います。
このことが、お子さまが「楽しい」を原動力に行動すること・習い事を選ぶことに繋がります。
STEP3:どんな習い事がいいか、大人が整理してあげる
お子さまが興味を向けている習い事があり、教室探しにも前向きに考えている場合などは、一緒に教室を探してみたりすることも良いでしょう。
習い事自体には興味はあるけれど、教室探しは面倒くさそうにしているときは、お子さまに教室探しをやらせる必要はありません。
その段階でやる気が削がれてしまってはその先に話が進みません。
教室探しを親子で一緒に行う際、マインドマップを用いる方法があります。
※マインドマップの例です。書くのは画用紙がよいですね。
調べた教室の特徴を子どもに聞いて、大人が付箋に書き出してマインドマップに貼っていきます。
また、マインドマップの評価軸の内容(授業料・イベント有無・授業内容など)をお子さまに考えてもらうと、お子さまが習い事を始めるにあたって気にかけていることや大事に考えていることが分かりやすくなります。
情報収集がある程度できて、マインドマップに付箋をいくつか貼れたら、教室の特徴別にグルーピングしてみて、良いグループの教室から順に体験や見学に行ってみても良いでしょう。
STEP4:入会後、親の心がまえは「楽しんでくれればいいな&別にいつ辞めてもいい」
さて、ようやっとのことで子どもが習い事に入会しました。
ここまでお疲れ様でした。
……で、ここからがこの記事の本番です。
子どもが習い事に入会したら、「楽しんでくれればいいな&別にいつ辞めてもいい」という心がまえを持って欲しいのです。
子どもが習い事を始めるにあたっての心がまえを30秒ほどの短い動画で簡単に説明していますのでご覧ください。
動画を見て
「辞めるの前提で考えるのはちょっと...」
「甘やかしすぎじゃない?」
と思った方もいらっしゃるかと思います。
「始めたからには多少つらいことがあっても辞めずに続けるべき」という考えは、家庭内外問わず教育の場において多くの場面で耳にしてきた考え方だと思います。
習い事に限らず、「ストイックに物事に取り組むべし」といった考え方は多くの人の中に根付いているように見えますし、大人の世界でも実際に成果を出している人たちは自分に厳しく物事に取り組んでいることも少なくないので、子どもに対して「いつ辞めてもok」と教えるのは一般的ではないかもしれません。
しかし、「辞めずに続けなければいけない」という考えに代わって、これからは子どもの「トライ&エラー」を担保してあげることを保護者さまの心構えとして持っていただければと思います。
子どもの「トライ&エラー」を担保することには、3つの大きなメリットがあります。
1つめのメリットは、子どもにとって「いつ辞めてもいい」状態のほうが、結果的に長く続く習い事と出会える」ということです。
習い事の内容や、その環境が子どもにハマるかどうかはやってみないと分かりません。
ですから、子どもが「新しいことにチャレンジできる」状態にあることが大前提として必要になってきます。
ここで、「一度始めた習い事は辞めちゃダメ!」ということを子どもに伝えてしまうと、「一度やると言ってしまうと、もし合わなかったときに辞められないから新しい習い事は始めないようにしよう......」と考えるようになり、子どもが次回以降のチャレンジに億劫に感じてしまいます。
ですから、子どもの習い事は「いつ辞めてもいい」と、保護者が認識する。
その方が、子どもの挑戦回数が増えることは明白です。
そして、新しい挑戦の回数が増えれば、子どもが自分のハマる習い事と出会える確率も、その分高くなります。
結果として、長く続く習い事と出会えることに繋がるのです。
また、往々にして、物事を長く続けている人は「なんとか続けないとダメだ」という意識で必死に続けようとしているのではなく、楽しくてやってたら勝手に続いているものです。
「楽しくてやってたら長い間続いていた」というものと出会うためにも、目の前の習い事を続けることだけに焦点を当てるのではなく、「いつ辞めてもいい」状態で「トライ&エラー」を高速で回転させていくことをおすすめします。
2つめのメリットは子どもが、習い事の中で「伴走する大人」を見つけやすくなるということです。
子どもにとって、親以外の伴走してくれる大人との良い関係は必要不可欠なものです。
伴走してくれる大人の存在の重要性については、ビーンズ独自の教育理論であるビーンズメソッドの中の4階構造という考え方の中で説明しております。詳しくはコチラの記事をご覧くださいませ。
この「伴走する大人」と出会うにあたって、より多くの環境でより多くの大人と出会う機会があれば、相性の良い「伴走する大人」と出会える確率が高くなります。
実際、習い事の体験や見学に出向いたときに、案内してくれる先生が偶然子どもと相性の良い大人だったということはあまりなく、むしろ「習い事の内容自体は良かったけど、今日案内してくれた先生はちょっと合わなかったな......」ということがままあるかと思います。
もちろん、担当の先生を変更する等の対応が可能であれば、習い事の教室を変えることをせずとも関わる大人を変えることはできますから、これも一つの「トライ&エラー」になります。
ただ、そのような変更などが柔軟に出来ない環境で、なおかつお子さま自身も教室に通い続けることに前向きでなければ、同じ教室に通い続けることに固執せず、環境を変えてしまって良いでしょう。
3つめのメリットは、子どもが自分にとってしっくりくる習い事を選ぶ方法やコツを身につける機会を確保できるということです。
お子さまにとって、良い環境がどんな環境であるか否かは、最終的にはお子さま自身で判断するほかありません。
自分が身を置く環境を自分で決める力を醸成するためには、多くの環境を自身の目で見て体験してみることです。
習い事を選ぶにあたって、たくさんの「トライ&エラー」を積み重ねることで様々な環境の特徴を見て取り、「自分が身を置く環境としてどうだろうか」という判断する経験を実体験として得ることができます。
検定試験・習い事選びの「トライ&エラー」が人生を豊かにする
石の上にも三年よりも「トライ&エラー」高速回転が大事
ビーンズでサポートしている保護者さまのお悩みとして、
「うちの子、習い事をすぐに辞めてしまうんです.....」
「検定試験を受けると決めたのに、全然やる気を起こさなくて......」
といったご相談は少なくありません。
一度始めたことは「石の上にも三年だ」とっていって無理に続けるよりも、とりあえずやってみて合わなかったら、「トライ&エラー」をぐるぐる高速回転させた方が良いのです。
なぜ、そう言えるか。その理由には、時代背景も関わっています。
現代では、「こうすれば幸せになれる」という正解を、企業も、政治も、エライ人も誰も持っていません。
トライ&エラーを繰り返して見つけていく必要があります。
誰かが正解を提示することがないので、「悩める10代」も自らの選ぶべき進路をトライ&エラーを高速回転させて、自分にとっての正解を見つける必要があります。
なぜなら人間は最初から自分自身の好きなこと・得意なことが分からないからです。
もちろん「小さいときから〇〇やっていた。だから〇〇が好き」ということはあり得ます。
しかし、小さいときからやっていた〇〇が100も1000もあることはないですよね。
一方、この実社会でやれること、スポーツの種類、職種、資格の数……取り得る選択肢は1000をはるかに超えています。
その中から、自分が好きで得意なものを見つけるためには、10代でトライ&エラーを高速回転させるのが有効なのです。
20代からトライ&エラーを高速回転させてももちろん良いのですが、残念なことに「4年卒大学から日系大手をストレートに目指すの場合」においては、そうも言っていられません。
どこかのタイミングで参加するコミュニティ・チームを絞り込み、コミット量を増やして経験やスキルなど、いわゆる”ガクチカ”を高める必要があります。
ゆえに、トライ&エラーを高速回転させるのは、小学生~高校生(長くて大学1年生)までが望ましいでしょう。
なお、私の考えとして「4年卒大学から日系大手をストレートに目指す」ルート自体については、かなり無理があると思っています。
大学や専門学校は一旦社会に出て、本当に学びたいものを肌で感じられたときに行くべき場所ではないか…そう考えています。
ここのことを語りだすと本記事の趣旨から脱線してしまうので今回は割愛します。
この記事の内容もぜひ
そして、10代の内にトライ&エラーを高速回転させるには、トライすることの心理的なストッパーを極限まで小さくすることが大切です。
トライすることで発生する心理的ストッパーを構成する因子は、「一度新しいことを始めると、何かあったときに辞められなくなるのでは?」という不安が大きな割合を占めます。
サクッと辞められるなら、サクッとトライできるけど、そうそう辞められないのであれば、トライすることに慎重になってしまうのも当然です。
また「一度始めたことはしっかり続けて何かしらの形で実を結ぶべき」という考えも、トライすることに慎重になってしまう一因としてよく見受けられます。
しかし、習い事を始めたばかりのタイミング(もしくは始める前)から、長く続けることを意識して根詰めてやるのではなく、「とりあえず家庭内の新しい雑談の話題にでもなったらラッキー」くらいに思っていて良いです。
むしろ、そのくらい軽い気持ちで始めた方が、「この経験も人間の幅・話の幅に繋がるな!」とポジティブに捉えることが出来ます。
どうせ何かにトライするのであれば楽しく取り組めた方が幸せですし、長く続かなかったことも含めて、色々な経験を人間の幅・話の幅としてポジティブに受け入れられることが、結果として人生の豊かさに繋がるのではないでしょうか。
一つの理想形が、同郷の偉大な先輩、”タモリ”さんです。
ご存じの方も多いかもしれませんが、タモリさんは多趣味の方です。
トランペット、シャンソン、ジャズ、オーディオ、鉄道、地図…そしてインチキ外国語……
これらほとんどが仕事に繋がっているように思えますが、もとはすべて純然たる趣味です。
趣味ですから当然「なにかやるからといって、仕事につながらなくてもよいし、いい加減でよい。」というスタンスでやっているのでしょう。
これが反対に、「やるならプロとか、やるなら『石の上にも三年』」と思ってしまうと、チャレンジの敷居が上がって怖くて何に対してもチャレンジできなくなってしまいます。
チャレンジを恐れて動き出せなくなるのではなく、気楽に構えて、タモリさんのように「好きかも?」ということに色々トライして、躊躇なくピボットする。
そうすることで、気楽に・いい加減に始めたことが、もしかしたら、「趣味のいい加減な外国語のモノマネがウケてテレビデビュー」できる(かも)しれないですし、もしかしたら、「地図を読むのが好きなタモリさんだからできる仕事」とかが70歳過ぎてやってくる(かも)しれません。
結果として人間の幅・話の幅につながり、また、新しいトライ&エラーの対象が見つかる...
それが豊かな人生に繋がるのではないでしょうか。
親が「トライ&エラー」と「ピボット」に慣れる
「習い事を辞めてもok」
「トライ&エラーを高速回転させることが大事」
と言われても、
子どもが
「なんか思ってたのと違う…(から辞めたい)」
「野球始めてみたけどサッカーの方が面白そう」
などと言って、せっかく始めた習い事をコロコロ変えようとしたり…
「やる気でないー」
「むつかしいー」
と、自分でやると決めた資格試験への準備や勉強をおざなりにしたり…
そういった子どもの様子をみて、「これもトライ&エラーよね…」と容認することに抵抗がある保護者さまも少なくないと思います。
「そうやって新しいことばっかり始めても、また同じことの繰り返しで他の事やりたくなるんじゃない?」という疑問がつい
子どもに尋ねても、大人が納得するような答えはまず出てこないでしょう。
子ども自身も次の挑戦が自分にハマるものかどうか、やってみないと分かりませんから、明快な回答を持っていないのは当然なのですが、そう分かっていても「ずっと何も得られずに時間もお金も浪費することにならないかしら......」と不安になってしまいますよね。
しかし、これとほぼ同じようなことが大人の世界でも日常茶飯事に行われているのです。
一例として、スタートアップ企業が創業時に目指していた計画を白紙にしたり、全く別の事業にチャレンジしたりすることが挙げられます。これを「ピボット」と言います。
「スタートアップ(企業)がピボットした」なんて言うと、子どもの習い事とは全く関係のない「組織の話」をしているように聞こえるかもしれませんね。
ですが、スタートアップ企業は殆どの場合、最初は社長一人です。社員はいません。社長が一人で事業計画書を下書き、融資やビジネスコンテストの面接を受け、皆の前でプレゼンしたことを社長一人で変更するのです。
もう一つ例として、新世紀エヴァンゲリオンの庵野秀明監督も一旦エヴァンゲリオンというアニメ制作から実写映画へと完全にピボットし、「シン・ゴジラ」を生み出しました。そして、その経験があったから(10年近い空白のあと)「シン・エヴァンゲリオン」が生まれたのです。
このように、大人たちは当たり前に「ピボット」しています。
「ピボット」は個人の人生を考える上でも非常に重要なものですので、もう少し詳しく説明しますね。
「ピボット(pivot)」という言葉は、本来「回転軸」という意味ですが、最近ではアメリカのシリコンバレーなどのベンチャー企業で「方向転換」「路線変更」といった意味で盛んに使われるようになりました。
新たに立ち上げた企業が当初の目論見通りに発展していくとは限りません。特にベンチャー企業の場合には新しいサービス、ビジネスモデルといったものを経営基盤とすることが多く、これらが市場に受け入れられれば短期間で成長することもありますが、そのようなケースはまれで、むしろ方向転換や路線変更を強いられるケースの方が多いと言っていいでしょう。この方向転換や路線変更をピボットと呼んでいるわけです。
ピボットは決して悪いことではなく、むしろ「ピボットをどれだけすばやく、数多く作れるかが、成功のカギ」とすら言われています。
どれほど優れたアイデアであっても、実際に試してみなければ使えるものか分かりません。新しい技術やサービス、ビジネスモデルといったものも、消費者のニーズに触れて初めて評価することができます。たとえ失敗したとしても決して無駄にはなりません。そこから学ぶことは数多くあるはずです。
こういったことは個人のキャリア開発にも言えます。全ての人が思い描いたキャリアを積み重ねていけるとは限りません。むしろ、思い通りにいかない人の方が多いことでしょう。個人レベルでも企業と同様に何度かのピボットを経験することになるわけです。しかし、それは決してマイナスではありません。むしろ、可能性を探ってみないことの方が将来に対するリスクは大きいと言えるかもしれません。
ピボットとは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ より引用
子どもにピボットを恐れさせない
実際、ビーンズの授業で進路指導をする際には…
「計画を放棄したり、変えたりすることは全くヘンなことではない。」
「計画を作った時点に比べて、経験を積み、状況が変化しているのだから、当初やろうとしたことを途中で止めたり、新しいチャレンジに切り替えたりすることは当たり前である」
というメッセージを生徒たちに繰り返し伝えています。
逆に言えば、そういったメッセージを繰り返し伝える必要があるほど、子どもたちの中に
「一旦作った計画を放棄したり、変更することはいけないことなのではないか」
「今まで費やした時間が無駄になるのではないか」
という意識が根付いているということです。
しかし、人生の中で方向転換・路線変更をしないことや新しい可能性を探らないことは、先述した通りリスキーであると言えます。
ですから、習い事という親の庇護下でのチャレンジにおいて、ピボットすることに慣れ、自分の新しい可能性を探ることを恐れないスタンスを持っていることは、決してマイナスなことではなく、むしろ非常に重要な経験になるのではないでしょうか。
悩める10代の検定試験・習い事 保護者さまのサポートする心がまえ まとめ
今回は、お子さまが検定試験に取り組み、新しい習い事にチャレンジするにあたって、保護者さまがサポートする際の心構えについてお伝えしました。
この記事で一貫してお伝えしたいことは「習い事も検定も、やめても良い」ということです。
一度始めたことを続けることより大事なことは、辞めることによって傷つくことなく新しいチャレンジに取り組むことです。
習い事や検定へのチャレンジは、むしろ更に新しい、子どもが好きで得意になる物を見つけるための必要な経緯として捉えてください。
保護者さまが子どものチャレンジとそれに伴う数多くの挫折を見守った結果として、子ども自身が挑戦を恐れず、前向きに進めるようになったケースが多くあります。
実例として以下の記事をぜひご覧くださいませ。