スパルタ教育のデメリット! 難関大学受験こそ主体的な勉強習慣が必要になる理由とは
本記事では、「難関大学受験こそ主体的に勉強するかまえが必要になること」「スパルタ教育は、なぜダメなのか」「スパルタ教育の大学合格後の弊害」について、ビーンズ塾長 長澤が『ビーンズメソッド』に基づいてお話します。
もくじ
スパルタ教育のデメリット! 難関大学受験こそ主体的な勉強習慣が必要になる理由とは
長澤啓(Nagasawa kei)
学年ビリから二浪し東京大学へ入学。ビーンズの活動が楽しすぎ、留年。経済学部経営学科卒。
ビーンズが積み上げてきたノウハウを「ビーンズメソッド」として文字化し、より洗練するのがメインのお仕事。さらに、親との衝突が絶えなかった自身の経験を活かし、保護者とのコミュニケーションにも注力。保護者さまと月100件以上やりとりをしながら、ビーンズ流の保護者さまサポートを拡充中。最近は副代表として、講師の採用育成プランの策定・外部協力者との渉外・経営企画までマルチにこなす。趣味はビールを飲みながら出汁巻き卵をつくること。
■インタビュー/詳しい自己紹介
・学校の勉強についていけなかった僕が東大に合格するまでと親と対立した日々について
「主体性のない勉強」で難関大学受験に合格することは難しい
学習支援塾ビーンズでは勉強(科目勉強や資格試験対策、面接対策を含みます)について、以下のように考えています。
(思春期を迎えた)子どもに無理やり勉強させても、学力向上・合格に意味はない。
子どもが主体性をもっておこなう勉強にのみが、学力向上・合格に寄与できる。
なぜかといえば、主体性な勉強ナシに、目標を達成したり、受験を突破することは難しいからです。
たとえば難関大学を目指して合格するためには、少なくとも1,000時間以上は「自分自身の力」で、勉強をしなくてはいけません。
難関大学合格に必要な勉強とは
・学校の授業に加えて平均1,500~2,000時間の勉強が必要(最低でも一年分以上)
・塾の講師が生徒と一年間で一緒に勉強できる時間は数百時間程度
・どんなに講師が効率よくやっても科目の基礎知識から受験対策まで教えられるのは3教科程度
・残りの時間、点数アップに必要な勉強(日々の復習・宿題)は生徒が主体的にやる必要がある
どんなに有名な塾や家庭教師にお願いしても、彼らは生徒を24時間サポートできません。先生たちが指導できる時間は限られているのです。
そのため、生徒は必ず自分自身の意志・力で勉強しなくてはいけない時間があります。そして、難しい受験を選択すればするほど、「主体的な勉強」が必要となっていくのです。
スパルタ教育は受験合格に逆効果
もし、子どもが主体的に勉強をするタイプでなくて、親や先生がスパルタのように強制して難関受験をさせようとしている場合、これは大変な道のりとなってしまいます。
当たり前ですが、勉強嫌いな子どもたちは「1,000時間以上の勉強を主体的におこなう」ことに耐えられないからです。
ボリューム1,000時間以上もの自学勉強に耐えるためには、子どもたちに少なくとも下地が必要です。
下地とは、すなわち、子どもが自分自身の進路に納得していて、心の底から「あの学校に行きたい・・・」と思っており、その上で、自分の得意な科目を増やし、勉強を重ねていき・・・それだけの努力を重ねることができる状態にあることです。
こういった下地は、わたしの経験上、親のスパルタ教育だけでは準備することが難しいです。
「とにかく勉強しなさい!」
「良い学校に行かないでどうする!」
「将来困ることになるのはお前だぞ!」
このような「恐怖と不安」で駆り立てる言葉がけでは、子どもは勉強に耐えられませんし、成績も伸びません。
そもそも親の叱責というのは、それだけで子どもにとってはかなりのストレスです。
そんな親の叱責を勉強絡みの話題で受け続けることで、「勉強というのは、やはり恐ろしいものなのだ」と子どもが学習し、むしろ勉強嫌いの原因になってしまう危険性があるのです。
スパルタは、親子ともども結果的には損
ビーンズでは、親や先生が子どもにスパルタで強制する勉強法を推奨していません。
なぜなら、親や先生が子どもへ、一方的に叱責して押しつけるだけの勉強方法では、最終的には親と子ども、双方ともに行き詰まってしまう危険性があるからです。
「ヤル気がないと勉強しないなんて甘えだ!」
「塾や家庭教師がビシバシ授業すれば子どもは勉強するものだ!」「昔は皆、とにかく黙って勉強していたものだ!」
そんな風にスパルタな考えをお持ちになられている保護者さまは少なくありません。
確かに、スパルタ教育は、短期的に効果を出す可能性はあります。
恐い先生や厳しい校風の学校、進学塾、予備校などに通わせれば、子どもが「怒られることや恥をかくこと」に怯えて、勉強をしてくれる可能性はあります。
しかし、子どもを「恐怖と不安」で駆り立てるのは、向く生徒と向かない生徒ではっきりと分かれます。
そして、もし子どもがスパルタ教育に向かないタイプだった場合、最悪は勉強と名がつくものには手につかなくなってしまうほどトラウマの原因になってしまう場合があります。
スパルタ教育の弊害は大学入学後にくる(東大編)
「ふーん。だったら、うちの子はスパルタ教育に耐えられるから大丈夫だ」
そう思っている保護者さまもいるかもしれません。
ただ、気をつけて欲しいことがあります。
それは、「スパルタ教育に耐える力はあくまで受け身のものであり、真の意味で主体性をもった勉強になっていない」という点です。
子どもが自ら目標を掲げていて、その上でスパルタ環境に身を置いているなら大丈夫ですが、ただ漠然と成績だけを追い求めてスパルタ環境に耐えているだけの子どもは、もしかしたら大学でつまずく可能性があります。
スパルタ教育によって、テストが得意になった生徒にありがちなことは、「点数を取ること」が目的となって、そこだけで勉強の意味づけが終わってしまっている、というケースです。
たとえば、「燃え尽きた東大生」という話があります。
「偏差値を高く!」とガリガリ勉強を強いられていた進学校出身の東大生が、大学に入った途端に燃え尽きたように活躍しなくなったという話です。
私も、模試の成績を周りに自慢し続けていた東大生を見たことがあります。
彼らがただ単に自慢しているだけなら、「うるせぃやい」と言えばいいのですが、彼らからは、なにか切迫したものを感じることが多かったです。
ここからは私の推測になるのですが、模試の成績を周りに自慢し続けていた彼らは戸惑い、そして焦っていたのではないのかなと。
そして、彼らの戸惑いや焦りの原因は、大学入学後、いきなりゲームルールが変ってしまったからではないかと思っています。
東大生(の一部)は、進学校やスパルタ予備校で、スパルタ教育を受けてきています。
彼らが東大に入学するまでのゲームルールは「勉強しないと東大にはいけないぞ」というものです。
不合格という恐怖と不安にあおられながら、自分のやりたいことを我慢し、先生に言われたことを守り、根気強く努力し続け……東大に合格したのです。
東大生の多くは、(提示された目標へ向けての努力ができるという面で)根は真面目で、素直な人たちです。
真面目で素直だからこそ高校までのゲームルールを内面化してしまっています。
(すべての東大生は多かれ少なかれこの傾向はあると思いますが、程度問題です。)
しかし、(どの大学も構造は一緒ですが)東大生は東大に入学したと同時に
「あなたたちは選ばれたのだから、大学時代でやりたいことを自分で考えて、突き詰めてみなさい」
「あなたたちは選ばれたのだから、世のため人のために頑張りなさい!」
というメッセージを受けとります。(東大入学式の祝辞が有名ですね)
よくもわるくも高校まで信じていたものをひっくり返され、ゲームルールを変えられしまうのです。
高校まで:先生の言われたことをしっかりやる。できなければ大学不合格という恐怖と不安ベース……。
大学では:自分でやりたいことを自由に考え、自分で決めて、楽しくやることがよいとされる
そして、東大生ともなると、周りにはこんな人達がいます。
「NPO活動してました!」
「ビジネスコンテスト参加しました!」
「起業しました!」
「〇〇を究めてました!」
みたいな人たちです。
東大では、そういう「自分のやりたいことを自由に考え、自分でやっている」人がキラキラして、めちゃくちゃ目立ちます。
しかし、そういう人は一握りです。一握りなんですが、目立ちます。
根は真面目で、素直な、スパルタ教育にも耐えられる人ほど、そのことに愕然とします。
そこで本来やるべきなのは、(大学というそれまでとは比べ物にならないほど自由に時間を使える機会に)、
自分と向き合い、自分が何が好きか。
何だったら主体的に頑張れるのか。
何だったらのめり込めるのかを考える時間をもつことです。
が、根は真面目で、素直な、スパルタ教育にも耐えられる人ほど「スパルタを我慢すれば道は拓ける」という経験を持っていることが多く(それで東大まで合格したのですから)、
”自分と向き合う”とか”自分の好きなことを探す時間を持つ”といったことが難しい・発想に浮かびにくいのではないかと思うのです。
まとめます。
スパルタ教育に耐えて東大に入った人ほど、東大に入った途端、ゲームルールをひっくり返され「自分のやりたいことを自由に考えて、自分でやってみなさない」というメッセージにショックを受けます。
でも、スパルタ教育に耐えられるくらいには根は真面目で、素直な人が多いので、ショックを受けつつ、そのメッセージを受け入れます。
次に、「実際に自分のやりたいことを自由に考え、自分でやってキラキラしている(ように見える)人」の存在にショックを受け、焦ってしまいます。
そして、彼らは自分が無能であると思われないために、(自分の価値を証明するために)東大に入学するまでの成績を延々と自慢し続けるのではないでしょうか。
とはいえ、東大に入学するまでの成績を延々と自慢し続けるようなスタンスは、”自分と向き合う””自分の好きなことを探す時間を持つ”とはつながりません。
といった(一部)東大生たちの状況にかかわらず、大学側は……
「社会問題を解決したいだろぅ? 東大生なんだから」
「イノベーション起こしたいだろぅ? 東大生なんだから」
「単位は主体性を持って選択してるだろぅ? 東大生なんだから」
と、あたかも東大生全員が主体性を持って入学してきたかのように、単位選択やゼミ選択を迫ってきます。
もちろんそれは壮大な勘違い、ファンタジーなのですが……
東大ともなると、さすがに寝ながら単位をとれる授業は少なく、かつ東大ともなると教授が手取り足取り学生に気遣ってはくれません。
東大生なんだからそれなりに主体性をもって自分で調べたり、自主勉強をすることを前提とする授業が多いです。
すると、なんということでしょう。
スパルタ教育に耐えて東大に入った人ほど単位を落としてしまうという事態すら起こり得るのです。
なぜなら、大学に入ったら授業をサボっても誰も怒ってくれないし、進学校やスパルタ予備校のように自分の行動を管理してくれる人もいないからです。
あ、私の場合、ビーンズの活動が楽しすぎてのめり込んでいたのでちょっと事情が違います。
東大生(東大じゃなくても)で「友達と起業するから休学・留年する」「留学するから休学する」「〇〇を究めたいから休学する」……というのは全然問題ありません。(社会はそういう主体性があり、何かに没頭できる人を争って求めます。)そうでななくて、ただただ不安になり、レポートを出せず、漫然と単位を落としていく…… ここで問題としたいのはそういう状態です。
(もしかしたら)身に覚えのある保護者さまもいるかもしれませんが、スケジュール・タスク管理ができないと、大学という環境はいくらでも底無しに怠けることができてしまいます。
レポートは何とか提出するけども、高校までの宿題と同じ感覚……”受け身(やらされ感)”で、出さないと卒業できないという”恐怖と不安”をモチベーションに嫌々やっている……。
高等教育機関である大学まで行って、主体性ゼロ……
また、高校までの勉強は暗記系だったことに対し、大学以降の勉強ではレポートや研究など、「自分で考え、発表・発信する」というスタイルが主流になります。
そこへのモチベーションが湧かず、大学へ通うことにプレッシャーを感じてしまう場合もあります。周りが優秀な東大ならなおさらです。
高校までスパルタ教育を受けていた人たちは、抑圧された環境下で知識を詰め込んでいました。
それが大学に入った途端「自分のやりたいことを自由に考えて、自分でやってみなさない」となった時……
「主体的に自分の興味のある分野を見つけて、それを学ぶ・突き詰めていく」というスタンスをとれないのです。
保護者さまへメッセージ。スパルタ指導は副作用が大きい
まずスパルタ指導法では、難関大学合格は難しいです。
そして、スパルタ指導に耐え抜いて合格することができても、スパルタの副作用は、それ以降の大学での研究や活動、ひいては就活においてさえ引きずることになります。
受験の先の世界・・・つまり、社会に出ようとすると、必ず「主体的に何かを学ぶこと」が必要になるからです。
お子さまの将来のためを思って、(本当は言いたくもないのに)むりやり勉強をやらせた結果、お子さまが大学で行き詰ったり、就職難になってしまっては、保護者さまにとっても、お子さまにとっても不幸ですよね。
子どもに主体性を持って学ぶかまえを身につけてもらう
子どもの将来を考えてあげるなら、大人がスパルタ教育で子どもに勉強を押しつけるのではなく、子どもたちが主体性をもって勉強をするかまえを手に入れるように働きがけていきたいものです。
ぜひ、本記事を読まれている保護者さまには、子どもたちを叱ったり将来への恐怖と不安で駆り立てて勉強に向かわせるのではなく、その分のエネルギーを、子どもが勉強に対して主体性をもつ方向に働きかけてもらえたらと思います。
大事なことは、子どもが「主体性をもって勉強するかまえ」を身につけるためのスモールステップを身につけるための手助けをすることです。
「なんで勉強しないのか」科目勉強に対するビーンズの考え方、「子どもたちが主体性をもって勉強するために、大人が心がけるべきことはなにか」については、下記の記事にて紹介しております
参考:『ビーンズメソッド』とは
「ビーンズメソッドってなに?」という方は…まずはコチラの動画をご覧ください。
「情熱大陸」「カンブリア宮殿」などの各種メディアで著名な花まる学習会代表 高濱正伸先生、教育ジャーナリストおおたとしまささん
このお二方とビーンズ塾長の長澤が、”悩める10代”の現状、そしてビーンズメソッドの考え方について講演しました。
おおたさんには「ガラスの十代のトリセツ/ビーンズメソッドに学ぶ」と題し、ビーンズメソッドの基本的な考え方についてお話しいただいています。
そして、ビーンズを取材していただいた『不登校でも学べるー学校に行きたくないと言えたとき』(集英社新書)。
講談社FRaUさんでは、ビーンズメソッドの内容を端的にまとめていただいています。こちらもぜひご覧ください。