子どもにゲーム・スマホ・パソコン・wifiの制限を約束させる方法
不登校・ひきこもりと密接な関係にある問題が、ゲームとスマホの依存です。
本記事では、子どもたちがゲームやスマホに依存しないよう、親がきちんとそれらの制限を約束させる方法、手順についてアドバイスさせて頂ければと思います。
もくじ
交渉の準備
まず一番大事なこととして、ゲームやスマホ、PCの電源は、必ず保護者さまが管理しましょう。
多くの保護者さまが、「ゲームを買い与えた後のセッティング、ゲーム機の管理などを子どもに全て任す」という放任主義の方針を取っていますが、子どもが自分で制限(セーブ)することは難しいことです。
なぜかといえば、ゲームが楽し過ぎて、なかなか辞められないからです。そのため、親が電源に関する最終的な権限を持っておくことはとても大事なことです。
また、ゲームやPCでなく、制限させたいことがスマホやパソコンなどのネット使用の場合は、子どもの部屋にLANケーブルを通さず、親がポケットwifiを持っておくと交渉が有利になります。(ネット回線がよく分からず、子どものほうが詳しいという方は、急いで勉強して知識をつけるか、詳しい人に相談しましょう。とにかく親がしっかり管理することが大事です。)
子どもと交渉する時のポイント
お子さまと交渉する時のポイントを以下にまとめます。
★ポイント1 : できるだけ家族全員で会議する
⇒母親もしくは父親一人と子ども一人、マンツーマンで約束しても、その効果は薄いです。できることなら、夫婦両方、兄弟もいれば全員参加して会議してください。こうすると、親兄弟の誰かが「ネット、ゲーム、パソコンを使ってもいいじゃん!」という意見も出したり、賛否が出る中で、約束を決めていくことができます。総合して時間はかかりますが、しかし、不公平感がない中で決めた約束は、後になって破りづらくなります。
★ポイント2 : 子どもに領収書や明細書をしっかり突きつける
⇒親が「ゲームやスマホについて話がある」というと、子どもはイヤそうな顔をするか、反発するかと思います。そのため、ゲームやスマホ、パソコンやwifiに関する明細書をすべて集めて、それらをきちんと提示しながら話をしてください。そして、「親である自分はこれだけの金額の出資をしているのだから、交渉は当然だ」という態度で接してください。また、交渉に先立って、親が各種電源やポケットWi-Fiを持っておくと、より親の本気度が子どもに伝わります。「交渉もせず、また約束も守れないなら、今回は本気で問答無用ですべてを取り上げる」と宣言して良いです。(甘さを見せず、しかし、怒りの感情だけで動いているわけでもなく、とにかく「真剣」だということが伝わればOKです。)
★ポイント3 : 最初は譲歩した交渉をする
⇒親がいきなり「すべて取り上げる」という理不尽なことをすると、親子の関係は劣悪になります。ですので、交渉スタート時は、たとえば「パソコンについては、受験が終わるまでリビングで利用してもらう。それができないなら返してもらう」などと切り出して、子どもに譲歩しながらも、制限をかけていくように交渉をしていきましょう。
★ポイント4 : 交渉は長引いて良い
⇒1日で無理に交渉を終えようとしなくて大丈夫です。できるところから、少しずつ交渉していきます。(ただし、日をまたいでから、交渉をまったくしない、もしくは約束を破るという駄々をこねた態度の場合は、没収して良いです。)
★ポイント5 : 大人も約束をきちんと守る
交渉が続いている限り、また約束の範疇で子どもがゲームやスマホをしている時は、たとえ試験が近づいていて真剣味が足りないと思ったとしても、感情的になって叱ったり、突然の没収はしないでください。親が先にスジが通っていないこと(約束を破ること)をしてしまうと、子どもが納得せず、親子関係が悪化する可能性があるためです。(何を話しても、親は自分の言うことを聞いてくれないから、もう今後一切信用しない、という考えになり、不登校などであれば、さらにこじらせていってしまいます。)
要点としては、親子の感覚で交渉するのではなくて、ちょっと抜けているビジネス相手、というイメージで交渉するようにしましょう。
通常、ビジネス相手に怒鳴りつけたり、頭ごなしに叱ったり、また一方的に物事を決める人はいないはずです。相手の言い分を聞きながら、しかし、きちんと制限(こちらの要求)を通していくように話し合いを進めていくことがコツです。
交渉の手順
交渉の手順は以下のように、「書式」をベースとして進めていきます。(口頭だけで交わした約束だと、互いに忘れたり、うやむやになってしまうので、必ず紙に記録して、きちんと可視化してください。)
交渉の流れ
(1)A3の紙など、大きい紙を用意する。
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(2)紙が三等分になるよう折目をつける
↓
(3)三等分にした真ん中を空けておく
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(4)三等分にした片一方に、保護者の言い分を書く
例)
・このままゲームばっかりやっていると心配だから、ネットの利用を制限したい。
・子どもが保護者との約束を守るなら、●●(ゲームやパソコン)使用を許可する。
・守らない場合、親は無線ルーターや充電器を封印する。(●●を返還してもらう)
↓
(5)三等分したもう片方に子どもの言い分を「うんうん」と聞きながら全て紙に書き出す。
↓
(6)子どもの言い分が、いかに幼くても、決して怒らず、淡々と紙に書き出していく。
一度でも、親が怒鳴ると、「だったら、ぼくも(わたしも)話を聞かない!」と、子ども側も椅子を感情的に蹴飛ばして、二度と交渉してくれなくなるので、感情的にならないように気をつけて下さい。
↓
(7)子どもの言い分に対して、こちらの反論も紙に書き出す。
↓
(8)子どもがどうしても納得しないなら、少しずつ譲歩する
↓
(9)子どもの言い分に矛盾があったら、文章(+図示)で淡々と指摘する
例)
・志望校に合格したいと言っているのに、ゲームの時間も確保したいなど、言っていることが滅茶苦茶だと指摘する
・子どもは親から怒鳴られるより、真顔で冷静に自分の矛盾・幼さを詰められることが一番こたえる
↓
(10)交渉の後、決めたルールは、空けておいた真ん中のスペースに書く
↓
(11)交渉が一段落したら、新しい紙を用意して、互いに取り決めたルールを清書する
・いっそ契約書のテンプレートで書いても良い
・できれば、子ども自身がパソコンで書式を打ち出すor紙に書き出すとよい
↓
(12)ルールを清書した紙に保護者様・子どもの署名と日付をいれる。
↓
(13)交渉で出たお互いの意見は、なるべく紙に書き出しておいて、リビングなどに貼りだして、保存する。
追加でルールを変更・修正したいとき
もし、追加条項を入れたくなった時は、必ず前述した「交渉の流れ」にのっとって、もう一度、話し合いをするようにしてください。
親が自分の都合で、勝手に追加条項を追加したりすれば、その瞬間から、約束の正当性は主張できなくなって、子どもは再びゲーム依存に戻ってしまうことがほとんどです。(親が約束を破るなら、自分も約束なんて守る意味がない、というように感情的になって話し合いができなくなります。)
親からすれば、非常にはがゆい思いをするかもしれませんが、辛抱強く、お子さまと約束をキチンと交わし、守っていくようにしてください。
まとめ
親が感情的になってしまうと、子どもたちも感情的になり、ゲーム依存、スマホ依存の問題はずっと解決しないままとなってしまいます。
また、もし、親が一方的に取り上げてしまい、すべてを捨てたりすれば、子どもは親への信頼を完全に損ねますし、もしかしたら自暴自棄になったり、家出などの危険性も出てきますので、とにかく冷静に話し合って約束を交わしていくことが大事です。
補足:ゲーム依存は国際的に疾患認定されました
ゲーム依存については、2018年、WHO(世界保健機関)によって、「日常生活に支障をきたす国際的な疾患」として認定がされました。
「ゲームをやってしまうのは子どもの意志が弱いからだ!」という考えの保護者さまは多いのですが、じつはゲーム障害は本人の意志が弱いからではなく、「治療が必要な病気」とされるほど依存性の強い娯楽なのです。昨今のゲームは面白すぎて、自分の意志だけで断ち切れるほど、生半可な娯楽ではない、ということを認識して頂ければと思います。
あまりに依存している場合、どうか子どもの意志だけに任せっきりにするのではなくて、きちんと家族で向き合って状況改善に取り組むことが大事です。(放置して、子どもの自主性に委ねての改善はかなり難しいです。)
※参考
・WHO、ゲーム依存症を「疾患」認定へ 予防や治療必要
https://www.asahi.com/articles/ASL6K741TL6KULBJ009.html
・どうしてもやめられない……「ゲーム依存症」を精神疾患として認定へ
http://bunshun.jp/articles/-/8045
・ネット依存の中高生93万人…5年で40万人増
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180903-OYTET50005/
・ネット依存 中高生の14% 厚労省推計 5年で倍増の93万人に
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201809/CK2018090102000135.html